8月18日、U-22日本代表候補メンバーが発表された。来年1月に行われるAFC・U-23選手権(リオ五輪アジア最終予選を兼ねる)に向けての強化合宿が、23日から26日まで3泊4日の日程で京都府内にて行われるためだ。
選ばれた25名は文末の別表のとおり。全員がJ1・J2のクラブに所属する選手たちだ。今回新たに招集されたMF内田 航平(水戸)、小泉 慶(新潟)、そしてFW鎌田 大地(鳥栖)の3名は、いずれも各年代を通じて初めての代表選出。高校のサッカー部から各クラブのスカウトに見出され、Jリーグを戦う中で花開いた選手たちである。
特に高卒4年目となる内田はまさにクラブ叩き上げ。水戸の関係者が大いに喜んでいたのが印象的だったが、それも当然だろう。Jリーグは「19歳以降の育成が課題」と言われて久しいが、下部リーグからキャリアをスタートさせた無名の高校生がサクセスストーリーを描きつつある意味は小さくなく、また示唆にも富む。現状、J2クラブの多くは即戦力を求めて大卒中心の新人補強になっており、そもそも専任のスカウトを置いているクラブ自体が少ないが、日本の高校サッカーの畑はいまだに豊穣。可能性を持つ選手はまだまだいるはず。発掘に力を入れるクラブがもう少し増えてくれれば、Jリーグもより豊かなものになるのではないだろうか。
週末のJ1・J2では、そんな新顔たちのプレーぶりに当然注目してほしいのだが、個人的に注目しているのは常連組のDF植田 直通(鹿島)だ。1994年生まれの20歳。今年1月のアジアカップには最年少で日本代表メンバーにも名を連ねた期待株である。187cmの長身に加えてパワーとスピード、旺盛な闘争心を備えた日本人には余りいないタイプ。ただ、今季は順風満帆とは言えない状況だ。1stステージは序盤で先発落ちを経験し、後半戦からポジションを奪い取ったものの、2ndステージからは再びベンチ暮らしが続いている。第7節まで消化して、出場は第1節の61分間のみである。
本人の中にたまっているものがあったのは想像に難くないが、鹿島の関係者によると腐らず、自分の課題と向き合いながらトレーニングを続けてきたとのこと。石井 正忠監督も植田のそんな姿を観ていたのだろう。8月20日の練習で、植田はスタメン組に入ってプレー。どうやら週末の山形戦で第1節以来の先発出場がありそうである。
「(出られない間は)自分の中で課題に思っていたところの改善に取り組んで、徐々に良くなっていると思う。このチャンスは絶対に逃したくない。チームのために全力で戦いたい」
多弁なタイプではないが、気合いみなぎる表情で紡がれる言葉には明確に力があった。また「後ろはしゃべれないと話にならないから」と、練習では声を出すこともより意識するようになったそうで、鹿島の20歳はまた少し進歩したのかもしれない。
試合に出ることで選手は成長するものだが、試合に出られない期間に成長できる選手というのも、ホンモノの証だと思う。たとえば岡崎慎司はそういう選手だった。果たして、植田の進化はいかほどで、それは鹿島のレギュラーポジションを奪い返すに足るものなのか。週末の試合を、楽しみに待ちたい。
■U-22日本代表候補メンバー
GK
櫛引 政敏(清水エスパルス)
牲川 歩見(ジュビロ磐田)
中村 航輔(アビスパ福岡)
DF
亀川 諒史(アビスパ福岡)
伊東 幸敏(鹿島アントラーズ)
奈良 竜樹(FC東京)
川口 尚紀(アルビレックス新潟)
岩波 拓也(ヴィッセル神戸)
安在 和樹(東京ヴェルディ)
植田 直通(鹿島アントラーズ)
吉野 恭平(サンフレッチェ広島)
宮原 和也(サンフレッチェ広島)
MF
内田 航平(水戸ホーリーホック)
原川 力 (京都サンガF.C.)
矢島 慎也(ファジアーノ岡山)
野津田 岳人(サンフレッチェ広島)
喜田 拓也(横浜F・マリノス)
中島 翔哉(FC東京)
前田 直輝(松本山雅FC)
小泉 慶(アルビレックス新潟)
FW
鈴木 武蔵(水戸ホーリーホック)
金森 健志(アビスパ福岡)
浅野 拓磨(サンフレッチェ広島)
小屋松 知哉(名古屋グランパス)
鎌田 大地(サガン鳥栖)